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「泣いてないってばっ」
「はいはいわかったって」
言葉に反して流れてくる涙に暁は段々と苛立ちを覚え、八つ当たり的に順平の学ランで顔をグイグイと拭った。
「ちょっ……お前なぁ!」
「泣いてないんだからぁっ!」
ぎゅっ。と順平の制服を両手で握り締め、嗚咽した。
押し殺して出される泣き声は、春の嵐に乗って晴天に舞いあがりかき消される。
どれくらいの時間をそうしていたか、しゃくり上げていた暁は大きく深呼吸をし、ぽんぽん。と頭を撫ぜていた順平は、少し大きめにぽん! と暁の背中を叩いて桜色に染まる青い空を仰いだ。
「彼岸花だけじゃなくて、桜も見せたかったんだろ?」
すんっ。と鼻をすすって暁は涙を拭いながら大きく頷いた。
「“いま”そいつが隣に居て桜を見てたら、なんて言うよ」
「……居ないもの」
「この場合想像しろよ?」
順平は「これだからコイツは」。と苦笑いして頬を引きつらせる。半年近く経とうとしているが、『あー言えばこう言う』。は、相変わらずである。
「……『綺麗だね』。って、言うわよ」
「どんな顔して言ってる?」
『綺麗だね、暁。オレ達は“自然”を知らないけど、こんなにも生命を教えてくれる存在があるなんて……』
「『素敵だね』」
暁は桜吹雪の中に佇み、満面の笑顔で桜を見上げる史朗を見つけて独り言のようにつぶやく。