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「母上! ってる……、笑ってるわ!!」

 風の中心となっているのは、今しがた目を覚ましたばかりの少女であった。
 カプセルの前で小刻みに震えて、飛ばされない様に必死でメインコンピュータにしがみついているナキとは違い、切れ長の眼をうっすら細めて静かに微笑んでいる。

「メシア様、ナキ様とご一緒に神殿へ非難してください! さぁ、早く!」

 ドウン!
 ラボの床にヒューマニックウォータが流れ出す。 カプセルが、内の水圧に耐えきれずに破損したのだ。
 そしてそれと同時に、まだ10代後半だろう少年がその親子に階上へ行くように指示し、2人の背中を完全に見送るまで自分はカプセルから離れなかった。

「……冬姫トキ、俺だよ。覚えているだろう? 毎日同調シンクロした甲斐があったね……。もういいよ、鎮まりな」

 少女、トキはまったく相反する肩まである白銀髪プラチナブロンドをさっと手でかき上げ、少年はまだこの世に“生”を受けて間もない彼女に言った。

「……もういい? PSYサイつかわなくなったら、みんな、もどってくる」

 真紅の瞳が色を和らげ、宙に弧を描いていた金髪がさらりと裸体からだにしなだれ落ち、嵐は、嘘のようにその場から消えた。
 少年はトキに自分のマントを羽織らせて、視線が合うように腰をかがめる。

「くすくす。大丈夫、戻ってこないよ。いい子だ。 じゃあ、次は何をするか……覚えているね」

「トキ、とぶ……。おひさまのした、いく」

 たどたどしい言葉でトキは少年の首に腕をまわし、かあっと再び瞳を真紅に染め、少年と少女は空気の中へと溶けていった。