p35
「堪えてください、リング」
ヒソっと耳打ちしたイオンは、リングに過去知視させて自分の内にある先程の出来事を直にリングの脳へと送ったのだ。
普段から何かに接触する度に“受信”してしまっていてはリング自身がもたない。 そう、日常では“受信”しないように制御しているのだが、異、相手がイオンとなると癖だろうかそれが甘くなってしまうのだ。
「──っ。 ……Jr.おかえりなさい。 お! もうガールフレンドなんて連れて、総主にも……っと、失礼でしたね、お嬢さん」
ドクドクと早鐘を打つ心臓を深呼吸で落ち着かせて、イオンとは対照的な柔らかい微笑みを浮かべてコウに視線を向けた。
「初めまして。イオンの相棒でリング=Bと言います。 本来ならイオンと2人で行動する方が重視なんだけど、まぁ……今日は例外でね。よかったらお嬢さんのお名前もいいですか?」
「だぁかぁらぁ──っ! おれはオンナじゃねぇよ!! っコウ! “くれない”って書いて“紅”っていうのっ!」
「へ、あ、そうなの? 男の子? ごめん、ごめ……————」
台の上でソーヤから離れて片膝を立てるように座っているコウに、リングは苦笑しながら謝る。が、一瞬にして黙って今し方まで笑顔だった表情を無きに等しくし、みるみる青くしてしまう。
それを後方から察したイオンは息を詰まらせ、バッ! と、リングの顔を覗き込み肩を力強く掴んで名前を呼んだ。
「リング!」
「っ————!! はっ……はぁ! はぁ! は……っ。わ、るい、イオ……っ。は……っふぅ」
こうとソーヤは普通でないリングの様にびっくりして再び2人して寄り添い、グッと体を硬直させてしまっていた。