p.4
だけどこの日はどうかしていた……。
薄暗くなっている理科室で、この日、高村くんは撮ったDVDをスクリーンいっぱいに映し出していた。
「この学校、撮ってるの?」
青空に、ま白い校舎だけが浮かび上がるように映し出されているそれに、私はほう。と、息をついた。
「キレイ……。 こうして見るとなんだか、別世界みたい」
そう無意識で言った私の言葉に高村くんは腕を組んで、
「うん……」
と、自信ありげに大きくうなづいた。
スクリーンを一点だけ鋭くみつめる横顔に、私はまた、ヘンな緊張を覚えた。
よく考えればバカみたいな話です。 暗幕を開ければ、同じ景色がそこにあるというのに……。 でも、暗さも関係していたと思う。
私はいつもどおりオレンジを、理科室の隅にある冷蔵庫に置きに行った。 冷蔵庫の明かり。スクリーンから反射される明かり。それを見つめる高村くんの横顔に、また、私は緊張する。 手には、しばらく前に彼がかじったオレンジ。
どきどきしていた。 緊張が頂点に達していた。
私は、彼がかじったオレンジと同じ場所にくちづけていた……。
「岡倉さん?」
緊張が、恥ずかしさとなるのに時間はかからなかった。
かあっ。と全身が熱くなり、それと同時に大きな羞恥心と不安が生まれた。
見られた!
私はこれまでにないくらいの速さで理科室から走り去った。
「岡倉さん!」
なんてバカなことをしたんだろう。
心の中を、むきだしにしてしまったみたい。すごく恥ずかしい……。
恥ずかしくて死にそうです。
それから三日間は、どうしても学校に行けなかった。 でも決まってお昼近くになると落ち着かなくて……。
高村くんが、オレンジを持って、私の姿をさがしてくれてるんじゃないかと……。
そう思うと、もういてもたってもいられなくて……。次の日には、大急ぎで美術室にかけ込んだ。