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 だけどこの日はどうかしていた……。

 薄暗くなっている理科室で、この日、高村くんは撮ったDVDをスクリーンいっぱいに映し出していた。

「この学校、撮ってるの?」

 青空に、ま白い校舎だけが浮かび上がるように映し出されているそれに、私はほう。と、息をついた。

「キレイ……。 こうして見るとなんだか、別世界みたい」

 そう無意識で言った私の言葉に高村くんは腕を組んで、

「うん……」

 と、自信ありげに大きくうなづいた。
 スクリーンを一点だけ鋭くみつめる横顔に、私はまた、ヘンな緊張を覚えた。

 よく考えればバカみたいな話です。 暗幕を開ければ、同じ景色がそこにあるというのに……。 でも、暗さも関係していたと思う。
 私はいつもどおりオレンジを、理科室の隅にある冷蔵庫に置きに行った。 冷蔵庫の明かり。スクリーンから反射される明かり。それを見つめる高村くんの横顔に、また、私は緊張する。 手には、しばらく前に彼がかじったオレンジ。

 どきどきしていた。 緊張が頂点に達していた。
 私は、彼がかじったオレンジと同じ場所にくちづけていた……。

「岡倉さん?」

 緊張が、恥ずかしさとなるのに時間はかからなかった。
 かあっ。と全身が熱くなり、それと同時に大きな羞恥心と不安が生まれた。

 見られた!

 私はこれまでにないくらいの速さで理科室から走り去った。

「岡倉さん!」

 なんてバカなことをしたんだろう。

 心の中を、むきだしにしてしまったみたい。すごく恥ずかしい……。
 恥ずかしくて死にそうです。

 それから三日間は、どうしても学校に行けなかった。 でも決まってお昼近くになると落ち着かなくて……。
 高村くんが、オレンジを持って、私の姿をさがしてくれてるんじゃないかと……。
そう思うと、もういてもたってもいられなくて……。次の日には、大急ぎで美術室にかけ込んだ。