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 私は、冗談が通じないからだ。 とも思ったけれど、いつもとんでもないことをやりだす高村くんだったから……。

 オレンジを、ぎゅっとつかんで、本当なのだと直感しました。

「そう……、なんだ……」

 この人も、なんて不器用な人なんだろう。

 私はかすかに震えた声で、高村くんに言った。

「なら……、一学期の間に、クラスのみんなも撮らせてもらえば良かったのに」

 このDVDには、だれも写っていない。 こんなに撮るほど……。

「ひとり、いるよ」

 好きだったくせに……!

「ひとりだけ、写ってる」

 カンバスに向かう ———— 私 ————。

「ひとりだけで、いいんだ……」

 いつもの横顔のまま、そう言った高村くんを、私はいったいこのときどう思ったのか……。 ただ、この間と同じ、全身が熱くなってくるのを感じた。

「……何が、言いたいの?」

 許せないっ。 涙が出てくる。

「わかんないよ……っ。私に何をわかれっていうの?」

 さんざん心の中かき乱して……。

「そんな風に言われたって……っ、カナダに行くことに変わりないくせにっ。」

 ぐしゃぐしゃにしておいてっ。

「何を言わせたいの? 私っ、どう答えればいいのよっ!」

 この後どうしたらいいのかなんて……。 私には……。

 ガリッ。

 口のなかが、オレンジのすっぱさと、涙のしょっぱさで、変な味がひろがった。それでも私はオレンジをかじって、かじって……。