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「あはは、いいよそんなの。 ――……ねぇ、有栖。もしかしたら」

「……っ?!」

 ドキッと高鳴った鼓動にあたしはばっと顔を上げて、慎ちゃんの顔を直視する。

「な……なに?」 ドクン、ドクン、ドクン……。

「……いや、なんでもない。ゴメンな……」

 すっと抱かれていた腕をほどかれてえっとなる。
 ……あやまらなきゃならないの、あたしのほうなのに。

「明日、疲れるだろうからさ……。 今日は家でゆっくりしてたほうがいいよ? 飛行機ってけっこう思ってるより疲れるから」

「うん……。ありがと」

「じゃあ、俺、今年最後の講義行ってくる。 また、電話入れるから」

 ぎこちなく笑って慎ちゃんを送り出し、あたしは玄関先から家の中へ戻ろうとして立ちつくした。
 まだ、遠くない記憶……。
 ドアを開けたら、ひとなつっこい笑顔。
『泣きたい時はぁ! ……泣くのがいっちゃんいいんだぜ?』