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『覚えて……』
くるくると頭の中で逆戻りした時計の針をぴたりと止め、史郎はゆっくり顔を上げて涙を拭った。
―――― 暁 ――――
彼女がいた。
「Dr.どちらへ?」
急に体の向きを変え、切ない面持ちのまま歩き出した主人に少々驚いて行き先を尋ねる。
「養成場へ行く。チームには一言いっておいて」
いつもの主人に戻った。そう確信した男は、かしこまりました。と言って、インフォグラスとセットになっている小型マイクでその旨をただ、伝えただけだった。
養成場に、彼女は居なかった。
史郎は考える間もなく昔自分も住んでいただろう科学者寮に行き、壁にある掌紋照合に自分の右手をかざす。すると自動にドアは両サイドに音をたてずに開いた。
よかった。どうやらリストから外されてはいなかったようだ。
「ここで、待ってて」
史郎は柔らかくそう男に言って、暗い部屋へと踏み込んだ。
懐かしいにおい……。