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うるさいほどのセミの声が、僕たち二人を取り巻いている。
……頼む。一分でいい、この周りだけに、静寂をください……。
「うん、けど自分の力……試したくて。 前にも話したことあったと思うけど、どうしてもやっぱり弁護士になりたいの」
夢に向かう君。 “将来”という二文字。
女々しくても、頼りなくても、僕は君との“将来”を考えていた。
「……一番最初に会ったとき、図書館で言ってたよね」
好きになるのは、一瞬の出来事で……。
“『法律好きなの?』 『え、あ、弁護士に……なりたいの』”。
そう嬉しそうに言った君の笑顔に、僕は一瞬で恋に堕ちた。
けれど……想いは伝えられないまま、時はただ過ぎて……。
「お祭りに帰ってくると、ホッとする」
屋台に集まる子供たち。 おはやしの音。
そういえばあの夏も、一緒に金魚すくいしたね……。
重なる、昔の二人の影……。
隣にいる君は、歩きながら頭上の花火に歓声を上げる。
「……明日、もう帰るんだよな?」
(恋しすぎるから)
伝えるのは……一生かかりそうで、言葉にしたら、もう、逢えなくなりそうで……。 言葉に、ならない。
「……うん。 小さいけど、裁判みっつ抱えてるから、戻らないと……」
心なしか、切なそうに君の顔が見えたのは僕の気のせいだろうか。 君の後ろに咲いた花火の、せいか……。 それとも……。
「……そっか」
(愛しすぎるから)
僕にとっては君こそが夢で……。
願う短冊には、君の幸せを祈り……。
消えゆく花火とともに、この想いも、終わらせよう。