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act.1
何かが、たりなかった。
何かが、かけていた。
気づきたくない。 思い出したくない。
ソレに触れるのは……いけないこと。
壊してしまう存在を思い出すのは、俺のなかではいけないことだった。
ココロとカラダ以外でつながる処は
ないのだろうか……。
「おい、課長の娘さんとのお見合い、断わったんだって?」
昼食のために外へ出たはずが、なぜか同僚が俺のところへ寄ってきて、興味深そうにそれだけをきいてきた。
「そうだけど?」
俺は笑いながら同期の友人に答える。
それより、このことは誰にも話していないのに……。
情報社会というものは、時に人を極限まで追い詰める。
「……ちょっといいか? 飯、おごるから」
友人は人目を気にしてか、俺を連れ立ってその場から去る。
残されたヤツらといえば、明らかにがっかりしたという顔をしてちりぢりに散っていった。
近くの定食屋に入った俺たちは、それぞれ注文してカウンターに置かれている小さなテレビに目をやり、昼間のバラエティーなんかを見ていた。
「……お前さ、そろそろ落ち着いたらどうだよ」
「はは!そんな歳じゃないよ。30も半ばになったワケでもなし……。 冗談」
いつもどおり、軽く笑う。
けれどいつも、瞳は笑っていなかった。
いつからだろう。こんな風に笑うようになったのは。
「営業成績は抜群。会社からの信頼も厚くて31歳にして係長。仕事としては十分だろ?」
「まぁね、けっこう幸せだよ」
その言葉にそいつは顔をしかめた。
はい、お待ちどうさま。 そう言って中年のおばさんがランチ定食を運んできた。
肉じゃがの、いい匂い。
そういえばあいつも……得意だった。
「それともなんだよ。 俺が不幸に見えるのか?」