弐~赤い惨劇
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姉貴の名前は里陰という。 3歳のおれと7歳の姉貴は、母さんから託されたメモに書かれた、神奈川にある養護施設に行くこととなった。 姉貴は中学を卒業と同時に定時制の高校とバイトを両立しながら、おれと施設から出て生活を始めた。
時にはわがままを言って困らせたり、けんかして傷だらけで帰ると優しくおれを抱いてくれたり……。
こんな私(おれ)をずっと見守っていてくれたのは、神でも仏でもない、姉貴ただひとりだけなんだ!
バンッ! という音と共に静まり返っている救急室の扉を影良は開ける。
「姉貴!!」
真正面にある診察台の上で、静止してピクリとも動かない里陰を見て、影良はザァーッと血の気が引く。
そして喉に何かを詰まらせたように苦しそうに、少々裏返った声を出して診察台に飛びついた。
「姉貴……っ。 姉貴!!」
人形のように白くなっている里陰からは、反応はない。
里陰をゆすり起こそうとしている影良を見かね、一人の女性医師がとり抑えて訳を説明する。
「桐生さん、桐生さん! おねぇさんはもう手遅れだったの!」
「……え?」
「路上で倒れているのが発見されて、ここに運ばれてきた時にはもう……」
?! ————うそ!! 何かの間違いだ……っ。 何かの————!
必死に自分に言いきかせる影良だったが、改めて見る里陰の蒼白とした、血の気の無い顔色に、怒とうの涙を流し、絶叫した。
「い……いやぁぁぁ!! やだ! 姉さんをかえしてっ、かえしてよぉ! っふ、姉貴ぃぃ!!」
「かなり鋭利な刃物で心臓をひと突き。即死に近い状態でした。 明らかに不自然だから、警察にも届けましたので……」
殺さ……れた? 姉貴が————?!