p44 ~ 序章 壱 ~万世逢着~ 完
「……影良、中に……」
気まずそうにそう言った光記の指示通り、影良は何も言わずに一番最後に中へと入り、座席に腰掛けた。
……どうして、どうしてこの男性なの。 こんな、感情……知らない……。
「影良……?」
ツー。 と、1人の少女の瞳から涙がこぼれた。
私、どうしたら……。 姉貴、私……。私、この男性が……っ。
夕闇で包まれた内苑。 会社帰りのサラリーマン。帰宅途中の学生。
あたりは徐々に灯るネオンの洪水に、排気ガスで淀んだ空気。 ここ都心は“夜の街”へと姿を変えようとしていた。
「この渋滞、まだ続くのか?」
かれこれ1時間近くここで車は停まり、徐々にではあるが、一向に前へとは進まないでいる。
「影良……。 喉、渇かないか?」
影良はゆっくりと首を横に振る。 今朝以来、口をきいていないのだ。
「そ……っか」
想い出せない(大切ななにか)
赦されない
赦されるわけのない 罪
何が真実で
何が虚偽なのか……
だれか 教えて……
「光、記さん……。 っごめんなさい——!」 ガチャ!
「っ?! えいっ、影良——!!」
影良は勢いよくワゴンのドアをスライドさせて飛び出し、うす明るい街の中へと消えていった。
