参~素直な気持ち
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影良は今しがた2回鳴った壁の時計の音を耳にしてベッドに横になりながらため息をついた。 深夜、2時である。
カチャリ。
すぅっ。 と、うす灯りと共にひとつの真っ黒い影が影良のベッドに映し出され、パタンという音と共にそれは消えた。
「影良……、起きてる?」
え————……? 光記、さん? なんで……。
影良は靄のかかっていたような頭の芯が一気に冴えてしまい、どういう訳かキュッ。 と、瞳を閉じてしまった。
ギシッ……。
枕元に重みが掛かり、傾いたのを感じた影良は、速くなっていく脈をどうにか落ち着かせようとするが、どうにも抑えられなくなる。
「もっと……、考える時間があれば……。っもっと覚醒が早ければ……っ。 こんなに傷つけることもなかったのにな」
サラリ。 と、光記は影良の前髪をかき上げ、じっ。 と、その額を見つめる。
影良はさっきまで高鳴っていた鼓動とは裏腹に、なぜか不安を覚えてしまう。
「……ごめんな。必ず、戻るから……。アイツのところへは、行かせないから……」
え……?
ふわっ。
影良の唇に自分の唇をそぅっ。 と、重ねた光記は、押しつぶされそうになるほどの切ない想いに顔を歪め、ばっ。 と、身を起こして部屋を出た。
「————っ!」
ドクン、ドクン、ドクン!
ぱたぱたと目から涙が溢れ、影良は声をめいっぱい押し殺して泣いた。
どういうこと? なんで……っ。 私、なんで泣いて……。
けれど、その涙の訳は、影良自身にもまだ、わからなかった。
“「トウ=コウ様……。わたくしが、いけないの。 トウ=コウ様、お赦し下さい」”
それからしばらくして、影良は涙に濡れたまま眠りに落ちるのだった。