~序章 参~ 闇中月光 ~ あんちゅうげっこう ~
壱~月影(げつえい)
p1
———— 月
今、ひとり。 龍神を司ると云われている王家に、代々の女王を継ぐ女児が生まれ堕ちた。
「“ラ=ゴウ”。 辞書の項目で示すところの“美”……。 ユエの民よ、この神子を ユエ=ア=テイ=シャ=ラ=ゴウ と命ずる! そしてこの神子を第98代目、ユエ王位継承者第一位の皇女とする!」
ワァッ! と、城のバルコニーに出ている白い法衣を全身に被った神官が抱く、まだ生まれて数時間しか経っていない児に数百万という人数の人が歓声を上げた。
この時ユエの星民は、総人口5分の3という数になっていた。
「今、地球との闘いの中で、我々の女神が現れたのだ! 我々ユエに勝利を!」
“「我々ユエに勝利を!」”
神官の声に民が呼応する。
「我々ユエに平安あれ!」
“「我々ユエに平安あれ——! ワァッ!!」”
「ケイ=ト女王。 将来姫様の側近として選ばれました、セピタ族第二皇子であられる セピタ=サイ=ヤ=シャ 。帯神を司る者にございます」
ひとりの初老の側近と共に現女王の前に片膝を付き、紫紺のマントで自身の体を隠すようにして、紹介されたのはひとりのまだ年端もいかない少年だった。
セピタ族は太古から砂漠の民で、その地域特有の褐色の肌、漆黒の髪。そして石榴色の紅い瞳をその少年も証のように持っていた。
少年は頭を下げたまま、然るべきことのように挨拶をした。
「ユエの暁であられる女王陛下にご挨拶申し上げます。姫様のご誕生心よりお喜び申し上げます。 ただいまご紹介に預かりました、セピタ族第二皇子、セピタ=サイ=ヤ=シャと申します。 以後、お見知りおきを」
「しっかりしておる。 齢、いくつになられた」
「先日、架冠の儀式を終えました」 ※架冠の儀式=(満8歳)