弐~翠の印
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「……ま。 ラ=ゴウ様!」
「っえ……! ……何? ヤ=シャ」
ラ=ゴウは怒鳴られるようにして呼ばれた方へ視線を移し、褐色の肌に石榴色の瞳を持つ、自分の将来の側近兼世話係に聞き返す。
「今のお話、きちんとお聞きになられましたか?」
正面のオーロラヴィジョンには、女王ケイ=トが映し出されている。
その映し出されている表情は、少なくともご機嫌……ではなさそうだった。
「……。 あら、きちんと拝聴いたしましたわ。 母上、ご心配なさらずにお続けくださいませ」
とても10歳になる娘が発する言葉とは思えないしゃべり方に仕草。
美・秀・麗……。 この時すでにこの娘ラ=ゴウにはそれらがすべて備わっていた。
“「……そなたは誰に似たか、最近良くない癖がついておるように見受けられるが。 のう、ヤ=シャ。そちの教育は一寸の抜かりもないのだろうの?」”
ヴィジョンからの言葉にラ=ゴウはわずかながらに眉をひそめ、膝へと置いていた扇をシャッ。 と、広げて口元を覆って言った。
「……お言葉ですが母上。わたくしの性格は母上ゆずりだと心得ておりますの。 ヤ=シャをお叱りにならないで下さいませ」
凛とした顔でヴィジョンにそう言ったラ=ゴウの言葉にケイ=トは刹那、呆然としてしまうが、ラ=ゴウと同じく扇で口元を覆い隠し、高々と笑い声を上げた。
『フフフ! なら先ほどの件は任せたぞ。 ヤ=シャ、手を貸してやっておくれ。 失礼』
フォンというわずかな音と共にその映像と音声は経たれ、しばし皇女室は沈黙の宮と化す。
しかしその沈黙を最初に破ったのはラ=ゴウだった。
「……ねぇ、ヤ=シャ」
ヴェルベッド色の唇を軽やかに揺らし、ラ=ゴウは自分が動かなければ微動だにしない側近に言う。