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「はい」

「……わたくしは母上になにを、おおせつかったの?」

 やはりお聞きになられてなかったのですね。 と、ヤ=シャは苦笑いしながら自分の斜め前に座る、腰までのウェーヴがかった黄金ブロンドの髪に、薄いグレイの瞳を持つ自分の主人に答える。
 まだまだ少女ではあるがれっきとしたユエ第一位皇位継承者に……。

「対セア戦勝利のセレモニーの歌姫でございます。 今年はソリスト、しくじらないで下さい? 姫」

「やっ! ヤ=シャのその言葉が毎年わたくしにプレッシャーを与えているのよ?!」

「そうですか? 昨年は女王より賜った勺をすべらせ、一昨年は段を踏み外してひっくり返り……」

「っもういいわヤ=シャ! まったくもぅ」

 カタン。 と、席を立ち、部屋を後にしようとしたラ=ゴウは、オートドアを出たと同時にどんっ! と、ひとりの男の子にぶつかる。

「っきゃあ!」

「っ無礼者! なぜこのような場所に居る! 衛兵!」

 黒髪の、どう見ても皇室関係者ではなさそうなラ=ゴウと同じくらいの男子は、とっさにぶつかったラ=ゴウの手を取り、ヤ=シャの警戒の声など気にも留めず、目の前の“少女”に声をかけた。

「っゴメン! みち、わからなくなっちゃって! よそ見してたからっ。ケガない?」

 ……なに、かしらこの子。
 ラ=ゴウは初めて自分に声をかけたはずの男子のしゃべり方に少々の疑問を抱く。

「っ子供! この方は正当なユエ皇位継承者、ユエ=ア=テイ=シャ=ラ=ゴウ皇女である! 口を慎め!」

「えっ! あ……っ、も、申し訳ございません! 皇女殿下とは知りませんで僕……っ!」

 すらっ。と、手をそろえて頭を伏した少年は、ガクガクと震えながら許しをこう。

「ヤ=シャ、わたくしは平気。そう怒鳴らないで……。 何をしていたのです?」