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 光記の、九十九当主の勅令に裕也は礼儀正しく返事をし、携帯で今の光記の言葉そのままを部下に伝えて部屋を出た当主の後へと続くのだった。
 また、また前世むかしの繰り返しだ。 前世むかしの————!

「チッ! なぜ影良から目を離した! こうなることは予想できただろう裕也!」

「すまない……。 けど、落ち着けよ、光記。トップに居るお前がそんなんじゃ部下は……」

 バンッ!
 立ち止まった光記の、壁を打った音に裕也はびくりと身体を震わせ、同様にその場へ立ちつくしてしまう。

「落ち着け……? っ落ち着いてなどいられるか! あの男が影良に何もしないという保障はどこにもないだろう! 自分のもとに繋ぎとめておくのならっ、……手段は選ばないはずだっ」

 そう、手段は……。
 その言葉がどんな意味を示すのか……。 裕也は喉を鳴らして光記の背を見つめた。
 一抹の、不安。

「それに……、自分の恋人が他の男の所へいるっていうのに、何も思わない訳がないだろうっ」

「そういう私情は二の次にしてもらわないと困るな、光記。 オーナールームへ来なさい」

 光記の言葉を遮るようにして言ったのは叔父、陽光であった。
 確かに、九十九という豪族の頂点に立つ者には、感情は二の次でなければならない。 本能だけのトップならば、トップである資格はない。 冷静な判別が、出来ないからだ。

「龍神が敵対したと聞いたが?」

「っ?! それは違う! 帯神に連れ去られた。という仮定の話です。 もしそうであっても! 影良は必ず連れ戻す」

「……光記、覚醒は済んだのだろう? で、あるならば、帯神はマインド・コントロールを主に能力としていることも承知しているだろう。 龍神が操られている可能性は多いに有り得る話だ」

 ドアが開かれ、光記は応接ソファへと陽光にうながされる。
 少なからず、今の言葉に光記はかなりの衝撃を覚えた。

「連れ戻すと言ったが、その前にお前自身が殺されたらどうするつもりだ。 光神の、九十九の第一子の血を絶やすわけにはいかないのだぞ」