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「エイラ、少しでもいいですから食べてください。 っお願いですから」
カチャン。 と、食器同士がトレイの上でぶつかり合い音をたてる。
そう、これで影良は丸2日何も食べなかったことになる。 そして、あれ以来、口を開くこともしないでいた。
「……どうしたら、声を聞かせてもらえますか? どうしたら、あの時公園で見たような笑顔をワタシに見せてくれますか。……っどうしたら、この想いは伝わるのですか!」
長いワンレンのプラチナブロンドの髪をかき上げて、ターシャはひと息つく。
冷たい翠色の瞳で、影良は肩で呼吸するターシャを見つめた。
それに気付いたターシャは小さく首を横に振り、消えるように次を告げた。
「エイラ……。 ワタシはアナタを強引にここへとどめておく事ができるのですよ。 ひとつは、マインドコントロール。帯神の能力でね……。 そして、ふたつめ」
半ば空ろな瞳をしたままのターシャの行動がわからず、影良は眉間にしわを寄せる。
ターシャはベッドに腰掛けている影良の前まできて、影良の視線の高さに自分の視線を合わせて片膝を付く。
「ワタシが無理やりアナタと関係を持てば、アナタは光神のもとへ帰りたいなどとは……言わなくなるでしょうね」
ゾクン————!!
「っ?! ——っ」
まずい。 と、思った瞬間、影良はベッドに押し倒されて、下からターシャを見上げることになった。
「光神は、アナタを通して、ラ=ゴウを見ていますよ?」
「……——っだ……てっ。 あんただってそうじゃないか!! “私”じゃない、羅豪を見ているのはあんただろ?!」 どくん、どくん、どくん、どくん————!!
「少なくともワタシ、ターシャ・V・ルースは、エイラ・キリユウに逢いに……、イングランドから参ったのです。 “ターシャ”という男は、エイラ、アナタが好きなのですよ」
え……?
一瞬の緊張の紐を解いた時だった。影良は自分の身体に覆いかぶさる熱を感じて顔をそむける。