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 首筋から少しづつ胸元へと近づく光記の吐息に、影良は息を呑んで体をこわばらせている。
 それを光記は察したのか、左腕をベッドの枕元へついて体勢を持ち直し、ふっ。 と、影良を笑った。

「クスクス。 ずっとそんなに突っ張ってるの? 明日、筋肉痛になるぞ」

「っな……! だってそんな……っ。 〜〜〜どうしていいかわかんないんだよっ!」

 影良は恥ずかしさで姿勢を窓際を向くように変え、ぷいっ。 と、そっぽを向いて光記に言った。
 そうなのだ。 本来ならまだ16歳になったばかりの少女なのだ。 この“女”は……。

「……影良、オレの事……信じてて? オレも、君の事信じてるから。 オレの……知らない君に、ならないで」

 羅豪は……。
 影良は自分の背を抱くように横になった光記の熱を感じ、ぼうとしたまま口を開いた。

「……羅豪は、あなたが好きだったの?」

 光記は影良を背後から強く抱いて、切なそうに目を細めた後、腕を離して天井を仰いだ。
『尊光様、眠るときは必ずわたくしの隣でお休みになって下さい。 わたくしを夜が明けるまで抱いていてください。 目が覚めた時に独りでは、寂しいんですの』
 ……貴女は、オレでなくても良かったのかもしれない。
 じゃあ、君は……。
 光記は影良の肩を自分のほうへ引き寄せ、ひっそりと、夜の闇に消えいるような声で“彼女”にきいた。

「影良、が好きなのは……?」

「私じゃなくて、ら……」

「羅豪は、オレを愛してくれた。少なくとも一緒に居た時は、ね……。 ——……君も、オレから離れたら別の誰かを見るの?」

「っ?! っやめてよそんな! ……っ桐生影良は! “九十九光記”がっ、好きです」

 哀しい、言霊ことだま。 寂しい、想い。

「だ……から、さっきの女性ひとだって……っ気になるしぃっ。 タ……シャはっ! 光記が私を……好きなのはっ、同情なんて……言うしぃ! わからないよっ!!」