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「いいえ! いいえ、ラ=ゴウ様、姫様のご縁談でございます」
え……————?
わたくしの、縁談? そんな、そんなことは……!
「う……そよ。 母上がお許しになるはず、ないっ……! ゴホン、ゴホン! っひゅ……!」
「っ姫様! 薬湯でございます! ……——さぁ」
ル=ビアは切なそうにガラスの器に溶かされた薬湯をラ=ゴウの口元に持っていき、苦しげに呼吸する主人の背中を擦りながらそれを飲ませた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。 っ大丈夫よル=ビア……」 すくっ!
「姫様?! なにをなさいます!」
呼吸を整えたラ=ゴウは、ショールもまとわずベッドから起き上がり、一直線、部屋のドアへと足を向けた。
「母上に会いに伺います。 ……っわたくし、嫌ですものっ!」
「姫様何も今行かれませんでもっ! 姫様!!」
ル=ビアの静止する声も虚しく、ラ=ゴウは部屋を後にした。
ヤ=シャ……。 どうしてここに居てくれないのですか……。 ヤ=シャ!!
半ば涙目になっているラ=ゴウは、決してさっきの薬湯だけでは楽になっていない体をようやくの思いで女王の間まで運び、ドアの前で立っている女王付きの衛兵に開けるように命じた。
「いけません、皇女様。 陛下はただ今お休みになられておいでです。 お引き取りを」
「っ——!! 誰に物を申しておる! 陛下に見舞い申しあげるだけぞ。 扉をお開けなさい!!」
ラ=ゴウがたまりかねて声を荒げた時だった。部屋の中からしっとりとした美声が廊下に届いたのは。
「ラ=ゴウ。上に立つものが、そのように無闇やたらと声を張るものではありません。 心しておきなさい。 衛兵、開けて良いぞ」
兵はその声が聴こえたと共に、すっと右手を左胸に当てて頭を下げ、シュン! と女王の間に通じる扉を開けた。 広い広間の真ん中に、金の装飾にシルクがあしらわれた大きな天蓋ベッドの中央に、ほっそりとした女性がひとり、静かに横たわっていた。