六〜月下の涙

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「――……っ!! っはぁ! はぁっ! はぁっ!」 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン――――!!

 ガバッ! と影良はベッドの上で震えながら飛び起きて、自分の左手首をバッ! と見る。
 血は……出てないっ。 ……っ夢――――!
 影良はガクガク。 と、震えながら、手首を強く握りしめた。 こちらが現実だと、“いま”生きている世界だという証拠が欲しかった。

「――……光記ぃっ!」

 ドクドク。 と、速まる鼓動と不安に、影良は自分をきつく抱いた。
『……現在いまの記憶はなくなりはしない。 ……っけど、正直恐いよっ。 自分でない自分が精神あたまの中に“いる”』
 こういう、こと……? 私が、自分が誰なのか分からなくなってくるっ。 こういうことなの――――!
 影良は浅くなっている呼吸を落ち着かせながら、もう真夜中になって月明かりで青く染まっている自室を見渡し、光記がいないことに余計に不安を覚えた。
 2時半……。 こんな時間に、部屋へ行ったら迷惑かな……。 でも、すぐ会いたい。怖いくらいにっ! 会って、名前を呼ばれないと……、“私”がいま誰なのか分からない!
 ギシッ。 と、ベッドをきしませて、影良は自室から隣の部屋なのに少し離れた光記の部屋をたどる。
『確カニ、ヤ=シャハソウ言ッタ』
 嘘よ。彼は私を愛してなんかいなかったの……。
『――……っワタシのほうが、こんなにもアナタを愛しているのに!』
 じゃあなぜ、ターシャは(夜叉は)あんなことを言ったの……?
『羅豪は、オレを愛してくれた。少なくとも一緒に居た時はね……』
 私はいったい……――――。

「――……」