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 光記の部屋の前まで来たときだった。影良は数センチ開いた部屋のドアから廊下に伸びる部屋の灯りに立ち止まり、かすかに聞こえる話し声に動けなくなってしまった。

「……まだ貴方のこと愛しているのよ? 6年間、本当に忘れられなくて……」

 亜伊さん――――?! こんな、時間に……? 昨日、付き合ってたって、過去のことだって……。叔父様が勝手に連れてきたって……光記は言ってたけど、亜伊さんはまだ……?
 影良は聞いてはいけない。と、思いながらも、足がどうにも動かなくなってしまい、ドア越しに立ちすくんでしまった。

「オレは、必死に貴女を愛した。 けど、爪の跡で答えたのは誰だ……。叔父貴からもらう物もらって勝手に別れていったのはどっちだよっ」

 ドクン、ドクン、ドクン……。
 どういうこと……? ねぇ、光記……お願い。“私”に気付いて……!

「昼間、言ったわよね。あの子に私を重ねているって……。前世なんて関係ないわ。今、生きているのは私、風見亜伊だもの。 あの子が今生で貴方を好きだという感情よりも! 私は貴方を愛しているのよっ!」

 ドクン、ドクン、ドクン――――!
 前世よりも、今生で……。
 影良はこくん。 と、喉を鳴らし、廊下の窓から差し込む月光に照らされて震えながらひと筋の涙を流した。

「————……正直、初めて影良を見たときは……、貴女を思い出したことは認めるよ」

 ドクン――――!!
 ……ああ、そういう……こと、だったんだ……。 すくっ。