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ターシャは穏やかに目を細めて、目の前の愛しい少女に言った。
月が移動して、影良とターシャ、2人のいる部屋の中をふわり。 と、明るく染めた。
「……物心ついた頃から、ある夢を見るようになりました。 それが、自分の生まれ変わる前の、魂の記憶だという事に気がついたのは、6歳になる前でした。毎晩のように、ワタシは眠ると月で生活をしていた。どちらが自分なのか、分からない。 ただ、ひとつだけ夢の中で幸せだったのは、エイラ。アナタと同じ魂を持った女性といられたこと……」
そっと、童話でもきかせる母のように優しく、囁くように目の前で言葉をつなぐターシャを、影良はどこか懐かしそうに聞いていた。
「どうしても、逢いたかった。目が覚めるとアナタは居ない。あの孤独感といったら……ありませんでしたよ」
くすっ。 と、自嘲気味に笑い、ターシャは影良との距離を少し取った。
「……いつ頃でしたか。それまで見ていた夢が急に現実的な世界に変わり、今まで月の世界に居た彼女とは姿こそ違えど、同じ魂を持っている少女が夢に現れるようになったのは」
「――……わ、たし?」
影良は頬から肩へと移されたターシャの手から伝わってくる想いと、それに応えようとするもう1人の“自分”の感情を抑えるのに必死になる。
“『ヤ=シャ……、わたくしはここよ? ヤ=シャ、ヤ=シャ……』”
出てくるなっ。 ……っしっかりしろ! 影良!!