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 いつも通りの昼下がり。桜舞い散る晴れた日のこと。俺はいつも通りの風景とサヤの笑顔に、何の疑問も抱いてはなかった。

「あたし、見合いすることになったの」

 残酷なまでに綺麗な微笑をサヤは浮かべる。

(別に、女なんて星の数ほどいる)

 うす紅色に色づいた形の整った唇を、サヤはゆっくりと動かす。
 桜の、舞い散る速さが増す。
 花弁が、俺とサヤの足元をすくうように風に流れていく。

(別に————)

「だからね、もう」

 哀しいほどに美しくって、サヤは風になびく長い髪を手の平でおさえ、刹那瞼を閉じた。
 ふとそれが開かれた瞬間、サヤは一線俺の瞳だけを見つめ……。

「あなたとは会わない」

(この女じゃなくてもよかった)

 じゃりっと寺庭の玉砂利の音と共にサヤは俺の脇をすり抜けて、俺の耳元に囁いた。

「さよなら」

 呼び止める事なんて、しなくてよかった。する必要なんて、なかった。
 それからどれくらいの日が経った日のことだろう。 夜の河川敷で……いつの間にか俺の周りには3人の身体と3人分の血……。

 カシャン。 と、俺の手からがその血の海へと滑り落ち、その手で額を覆ったらヌルリという生臭い臭いと触感が俺を我に返らせた。

(人を斬った。なに、ただの喧嘩だ)

 まとわりつく血の海から自分の太刀を拾い上げ、赤黒い月を仰いだ。三日月、だった。

(理由は、決して言うまいて……)

 血の海の中で独り、俺は茫然と立っていた。
 月が出ている次の日は晴れると、誰かが言っていた。