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私の下で、その青年と少女は駆け落ちのために待ち合わせを致しました。
しかし、2人が駆け落ちすることは……無かったのでございます。
約束の場所。約束の時間。けれど……彼女は来なかった。
陽が頭の真上に昇り、それが海の向こうへ沈んでも……。それでも彼女は来なかった。
初夏になろうとする生暖かい風が吹き抜ける。
(別に、悲しい訳じゃない)
暮れなずんだ寺を背に、俺は石段を下りて何かに引き付けられるようにして旅に出た。
(女など、星の数ほどいるものだ)
血の臭いが、まだ残っている。
渇いた心の隅で、彼の日が何かを告げた。
(彼女は人間じゃない)
ざぁんと着物の裾を、いつの間にか海辺まで来ていた波が濡らす。
(幻影だ……。いつしか、消えるだろう)
川と海が合流する直前に、橋がかかっている。
俺はその橋の上で立ち止まり、耳にだけ届く川の流れを下にみていた。視えることのない、が映される。
草の指輪……。
『ねぇ、草の指輪。西洋ではね? 左の薬指にするんだって』
(よく、作って……俺がはめてやった)
川に流れていた……。
『どっちの笹舟が一番速く海に出るか。いい? よーいっどん!』
(いつも俺が勝って……彼女はスネていた)
あの村から、続いている川……。
―――― もう何も視えない ――――