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―――― 寺! ――――

思い出すなり俺は、切れそうな草履の鼻緒をそのままにあの寺へひた走った。
太刀と脇差しが振動でカチャカチャ音を立てる。 血の味が染み付いてる太刀。そして……脇差し……。

―――― リボン ――――

(リボン……。白いリボン。……サヤ……)

―――― 桜の下で ――――

息を切らして懐かしい石段を駆け上がる。 境内の左横にある、桜……。

(桜の下には……)

ざああっ!
風に桜は踊らされる。
俺は桜の根本にしゃがみ込んで土をなでる。

(桜の下には……)

―――― 死体が埋まっている ――――

青年は、全てを思い出します。……いえ、忘れたフリをしていただけなのかもしれません。
哀しい、せつない想いを……。

記憶が、よみがえる。あの時……俺はサヤを、殺したんだ……。

『……俺と駆け落ちする前にまた見合い話がきたら、見合いするの?』

『……え?』

彼女は一瞬戸惑った。
俺は俺じゃなくなった。
―――― あの時俺はサヤを殺した ――――