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「お袋さん、知らないんだろ?」

 ここの場所。

 晴行さんはEDWINのジーパンの後ろポケットからサイフを出して、カウンターの隅にある電話に手を伸ばし、“どこかへ”ダイアルした。

「センパイ。はい、コーヒー。 ミルクと砂糖ここに置きますね」

 どこからか、いつの間にか入れてきたコーヒーをカウンターの隅に置いて睦月は言った。

「……サンキュ」

 晴行さんの声が鼓膜に届いてくる。

 あ、もしもしこんばんは。葵君の友人の田野中と申しますが。 今、葵君一緒に居ますので、はい。 今日中には帰しますから、はい。

「“心配なさらないで下さい”」

 目頭がじん、と熱くなった。
 俺は眉間にしわを寄せてうつむいた。 ぱたぱたと目から涙が落ちて、ジーパンに黒いシミをつくる。
 リン、と晴行さんは受話器を置いた。

「……心配そうな、声だったよ?」

「だって……あいつ、あいつ全っ然わかってねぇじゃん!」