p.39
「……やけにそっけないねぇ、君。 あ、中学の頃の晴行に似てるんだ!」
「え、あ……あー! うん、似てる似てるっ」
俺は見も知らずの人に言われて気に障ったのかなんなのか(よく分からないが)眉間にしわを寄せる。(どうやらこれは癖らしい)。
それをその人は見て感じ取り、わずかに微笑して俺に謝った。
「ごめんなさい。 私、香川 舞子です。晴行の、幼馴染み……」
睦月がかすかに苦笑いして、晴行さんが舞子さんから目をそらしたのがわかった。
……なんか、“アリ”っぽいな……。
「あー、日下 葵です。よろしく。 っと、晴行さん、俺そろそろさ」
軽く会釈して、俺はその場を去ろうとする。 時間が、もうすでに6時を回ろうとしていたのだ。
「っえ、あ、じゃあボクも帰ります!」
「え、そ……なの?」
いつもならまだボクもっと弾いてきますから。 とか言って入り浸る睦月が、めずらしくそんなことを言った。
俺は、なんかまた曖昧な返事しかできなくて、それでもお先になんて言って店を出た。
雨は、上がっていた。