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“「葵ってさ、ヘンに頭がいいから先読み深読みしすぎるんだよ。 言い方変えれば性格悪い? けど、そこが……葵だよね」”
“―――― 分かってくれる友達(ダチ)、いないだろ ――――”

 その瞬間(とき)、俺は晴行さんを嫌いになるかと思った。 けど、違った。 反対に、ものすごく安心できることを覚えた。
 晴行さんに、憧れるようになったのは、あれからだ……。

「……センパイ、ボクでよかったら何でも話してくださいね」

「……さて、5時限目始まるぞ」

「えぇっ! あっ、次英語っっ! ボク行きます! センパイ無理しないで下さいねっ!」

 睦月は階段入り口に走りながら、そんなコトを軽く言った。
 けれどそんな睦月を見て俺は、昨日みたいなうっとうしさを感じていない自分に対して、少々驚くのであった。

「ただいま」

 ポストに入っている合鍵を差し込み、玄関の扉をがちゃっと開けて暗い家の中に向かって言った。
 午後6時30分。 もちろんお袋はまだ帰ってきてない。
 俺はしんとし過ぎて耳が痛くなるのを覚えて、リビングのテレビを即座に付けに行った。