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 ああ、そうか……そうだよなぁ。

 親父は、そう自分に言いきかせるようにして俺の部屋を出て行った。
 俺はさっきまで眠くて眠くてしょうがなかったはずなのに、みょうに頭のシンが冴えてきて、ヘンな感覚を覚えた。
 部屋を出て行った親父は親父のはずなのに、ヘンな気分だった。 正直気味が悪かった。

 そして翌朝。もうだいぶ前から出来なくなってしまっていた親父のボタン。そしてネクタイ。お袋は日課のようにそれをしてやり、いつも通り俺は学校へ、親父は会社へと出かけて行った。
 俺が学校に行って2時間位したとき、うちに電話がかかってきたという。
 駅、からだった。
 親父は2時間あまりの間、改札口のところで行ったり来たりして、おどおどしていたらしい。
 そして不審に思った駅員が話しかけたところ、急に親父は泣き出したというのだ。
 改札口を通るのに、通り方が分からなかったという。

『お宅の旦那さん、ちょっと普通じゃないですよ』

 親父はお袋に付き添われて、そのまま入院することになった。
 それから俺は、親父には、会っていない。 会ってやらない。
 親父は弱いヤツだから。
 俺が小学生のときに学校へ行きたくないと言ったら、登校拒否は弱いヤツのすることだ。とか言っておいて、自分は会社に行きたくないから病院入りしちまった。
 親父は弱い……。