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「なんでよぉっ! どーして!? 理由はっ! 理由言わないと納得しないから!」

 しまった。あたし、自分の声がでかいという事を失念していたわ……。
 ざわっとした店内よりも、どういうわけか意地になっている葵をあたしは問い詰めて、かなり前に注文してとっくに冷めてしまっているココアを一口で飲み干した。
 まだ真っ赤になっている葵は顔を覆いながらゆっくりと上体を起こす。

「あお……っ」

「俺がっ、……俺が先に誘いたかったのに小夜子が先に言うからっ」

 どきん……て、心臓、去年みたいに戻って……。こんなに小さなことなのに、涙が出そうになった。 嬉しくて、幸せで……。
 大学の講義が終わったのか、人が多くなってきた。

「————……じゃあ誘ってよ。くすくすっ、同じ気持ちって、幸せだね」

「……行こう」

 差し出された手を握って、まだほんの少し顔の赤い葵を見てあたしは笑顔で返事をした。

『しょうがないだろっ。俺だって、二つも年上の女好きになるなんて思わなかったんだから』
 そうだね……。あたしも、思わなかったよ。二つも年下の男を好きになるなんて。
『————俺のそばに、ずっと……居てほしいんだけど』
 あたし、葵から好きだって言われた時から、もう……そのつもりだったんだよ?
 葵のためにご飯を作る。葵のために掃除する。葵のために洗濯をする。葵の……ために。

「夢みたい。でも、夢じゃなかったんだよね……この一年」

「え? なに言ってんだよ」

「ふふっ。 幸せだなぁ~って! 一年間、ありがとうございました。二年目も、よろしくお願いします!」