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「いやぁ、センパイが会社持ったって聞いたんで、雇ってもらおうと思って来たんです。 で、その会社ってどこですか?」
嬉々として言った睦月に、葵は再度肩を落とし、溜め息と同時に今しがた自分が出てきたおんぼろビルを、気力無く指差した。
「……やっだなぁセンパイ! はるばる来た後輩相手にジョークもないでしょう。……って、え? 日下、旅行代理店っ!?」
えぇっ!? と、少々オーバーな驚きを葵の前で披露したあとその場にへたりとしゃがみ込んだ睦月は、
「ウソ……」
そう、ひきつり笑った。
「悪いな、こんなものしか食わせてやれなくて」
陽もとうに沈み、星がひとつふたつ出てきた頃、ここ日下旅行代理店事務所では、さっきまで埃っぽかったテーブルに懐中電灯を天井に向けて立て、コンビニの弁当を頬張る2人、葵と睦月が居た。
「いえっ! 僕こそすみません。ごちそうになっちゃって……」
そうすまなそうに言った睦月を見て、葵は箸を止め情けなさそうに笑って睦月に返した。
「……半年位前からこんなでさ。だから、ごめん。雇ってやれないんだ」
葵が瞳を伏せると同時に睦月は驚愕し、ガタンと立ち上がった。その勢いで舞い上がった誇りにごほん! と、むせるが、喉がいがらっぽいのを抑えて葵に怒鳴る。
「半年も前からこんな生活してるんですかっ!? 決めた。お給料いらないですからここで手伝わせて下さい!」
異様に力の入っている睦月に対し葵は、それじゃあ、と口を挟もうとするが、睦月強し。
「僕が勝手にやるんです。僕の意思ですっ。誰にも何も言わせません! いいですねセンパイ」