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「その彼、なんだけどね、自然死ではなく他殺だとさっき正式に鑑識結果が出たそうだよ」

 ぎらりと薫の瞳の奥が揺らめいた。

「睦月から聴いた。妹さんの死が、睦月に失恋したせいだって」

 葵はカラカラに乾いた喉を少しでも潤そうと唾を飲み込む。

「……なんか、勘違いしてない? 日下くん。 あたしが七澤くんを恨んでるとでもいうの?」

「そうだ」

 葵の即答に薫は一瞬頬を引きつらせ、薄笑いを浮かべたまま否定する。

「冗談じゃないわよっ。 どうしてあの子の自殺が七澤くんのせいだってあたしがわかるの。 遺書は無かったのよ?」

 まるで女優にでもなったかのように薫は訴える。けれどもそれも次の葵の言葉で無意味なものにすり替えられてしまう。

「遺書が実はあったのだとしたら……。あって、久世さんはそれをきっと読んだはずだ。けれども警察には言わなかったんだ。理由は、解らないけどね」

 薫の表情からすっかり笑みは消えていた。その代わりに鉛のように重くなっていく様を葵は気付かない振りをして進める。

「睦月の事をどうやって調べたのかも分からないけれど、調べていくうちに戸野辺たちにあたり、睦月を苦しめるように頼んだ。買収してね。もちろんその辺の根回しは上杉さんがしていたんだろうけど」

「……」

 もう薫は口を開かなくなっていた。言葉を告げるどころか瞬きひとつしないでじっと葵に耳を傾ける。
 それはまるで無機質なマネキンのようだと葵は感じた。

「が、睦月から金銭をせびる傍ら戸野辺たちは味を占め、逆に久世さんたちを脅迫してきた。金額を跳ね上げないと……ってね。そして久世さんはあの、列車内での犯行を思いついたんだ。 睦月の事を知っていれば俺にも繋がる。事務所のことを戸野辺から睦月に吹き込んだのも計画的だった。 睦月が殺人犯として逮捕され、自分たちの存在を脅かす2人が死んでしまえば、何も言うことない。安泰だった」