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あいつを助けるんだ。 約束、したんだ。
今や葵の心を支えるものはただ一つ、さの想いだけだった。
「上杉さんが犯しただろう罪を睦月に被せて、終わりのはずだったんだ。なのに、今度は唯一の味方である上杉さんまでもが敵にまわってしまったんだ。そして一昨日の晩……」
「アリバイがあるわ。日下くんと一緒に居たじゃない」
絶対的な、自信。けれどもそれを抽象的なものにすり替えようとする何かが働いて薫の声は震える。
「……そうだ。俺自身気付かなかったよ、利用されていたって。1度ならず2度までも、ね」
眉間に皺を寄せて苦々しく言った葵は、今朝がた渋谷に聞いた言葉をそのまま復唱する。
「水が電気をよく通すってことは知っているはずだ。そして、マンションのゴミ捨て場に捨てられていたふたつの延長コード。2本のうち1本のコードは両端、導線がむき出しの状態。そしてプラグが付いている方のコードは切り離されたところがやっぱり導線だけになっていた。 ……上杉さんが発見された浴室のドア付近。焦げた跡がわずかに残っていたそうだよ」
しばらく黙って葵は薫が打ち明けてくれるのを待つ。が、薫はやはり黙るだけでそれ以上の待機は無意味といえた。
仕方なしに葵は自分で口火を切る。
「家のコンセントにプラグが付いている方のコードを差し込み、導線部を床にあらかじめ作っておいた水溜まりに垂らす。もう一方のコードは一方を浴室のドアノブへ巻き付ける。その水溜りを踏んでドアノブに手をかければ、その瞬間に何万ボルトという電流が走るそうだよ」
「頭良かったものね、日下くんて」
薫の突然の切り返しに葵は戸惑い二の句を告げられなくなってしまう。
その薫の表情には、さっきの様な人形めいた影はなくなっていた。
観念、したのだろうか。