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「ああ。昨日移送されてきた七澤ね。彼なら先ほど警察病院へ運ばれましたよ」
「え?」
京都へ着き、ツアーコンダクターを小枝子に一任して京都府警察へ足を運んだ葵が、窓口に居た婦人警官らしい女に睦月の事を聞くなり眉間に皺を寄せることとなった。
「ど、いうことですか」
「……その前に、身分証かなにか持ち合わせてないんですか? こちらとしてもむやみにこういう事はお教え出来ないんですよ」
とても不機嫌そうに言った婦人警官に葵は苛立ちを覚え、ブルゾンの胸ポケットから免許証を出して強く言った。
「七澤はうちの事務所の従業員です。 ……病院の場所は」
婦警が渋々と口を割ったのはそれから30分という信じられない時間が経過してからだった。
秋の昼下がりにしては寒く、冷たい風が病室の窓を揺さぶっていた。
「脳波に少々のガンマ波が現れていますが、言語障害等はありません。意識を戻してからしばらく取り乱していたので、精神安定剤を打ちました」
若白髪のあるボサボサの頭髪を、若い白衣を着た男はカシカシッと掻いて、眼鏡の位置をすっと指で直し、手中にあるカルテを読みあげた。
するとその横に居た白い髭をたくわえた院長クラスの医師はベッドに横になり、天井をただ一点見つめて動かない睦月に対してゆっくりと言った。
「心配せぇへんでええ。ここには警察はしばらく入ってこられんようにした。 ……せやから、ゆっくりと休んでええんやで」
天井だけしか視界に入っていなかった睦月は唇をキュッと結び、眉根を寄せて涙を流し、掛布団をすっぽりと頭までかぶって鳴咽した。
「じゃあ藤崎君。あとはよろしゅう頼んまっさ」
「はい。お任せ下さい」