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「……睦月、俺がなんとかしてやるから、落ち着いたら話してくれるよな」
「うわー、無視なの? ひどいなぁ、ひどいと思わないかい? 七澤くん」
自分に話が振られるなどと思ってもみなかった睦月はおどおどするしかなく、葵に再度目をやった。
「……睦月、ちょっと眠ってろ。起きたら、話そうな」
「っい、はいっ!」
廊下へと出て行こうとした葵は思い出したようにして、目配せで圭助を廊下へと誘った。
「で、どう?」
「……不安神経症だね。過呼吸で運ばれてきた」
中庭からさす夕陽のせいか、オレンジ色に染まった廊下をゆっくりと歩きながら葵は主語のない質問を圭助へと投げる。
けれどもその主語のない質問に圭助が何の疑問も持たないでさらりと答えられたのは、この2人の付き合いの長さを示していた。
「……で、どうしてこんなトコに居るんだかなぁ、お前は」
「教授のご指名よ。 白羽の矢がねぇ」
2人とも会話になっているようで実はなっていないんじゃないか。
そんな感じのままで葵はふと足を止め、今までのトーンからやや低くして聞いた。
「あれの事件、知ってるか?」
あれ。つまりは睦月の事である。
「新聞読んだよ」
白衣のポケットに片手を突っ込んで、マルボロのライトを1本、取り出して喫煙席に腰を掛ける。