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 が、そのすがるような相手の声なんぞ聞いていられるかと、葵は胡坐をかいたまま電話先の相手に目を細めた。

「冗談なんかじゃないさ。 昇進試験の監督、誰がやってんのか知ってるよな?」

 圭助は大体の事が分かったらしく、窓のそばにある鏡台の前へ座り濡れそぼった髪を丁寧に拭く。

「職権乱用」

 ぼそっと言った圭助を葵はげっとして受話器を持ったまま振り返り、話しを続ける。

「まぁ、頼む。こっちから電話するかもしれないからさ。よろしく」

 かちゃり。と受話器が下ろされ、すでに敷いてある布団に葵はボスン。と、仰向けに寝転がる。

「警察官脅しちゃいけないだろう。しかもおじさんの名前で」

「……いーだろ別に。使えるものは使う。それ正しい!」

「くくっ。相変わらずだよなぁ」

 ぷあー。という古めかしい音を出すドライヤーをかけながら、圭助は笑って付け足した。

「俺、明日東京へ帰らなきゃいけないんだけどね」

「一日。 睦月が明後日警視庁に移送される。 それまでに接触できないかな」

 睦月にコーヒーを渡した少年。現場を目撃した女性。
 葵の言葉はこの二人のことを指していた。

「……そうだな。帰って早々有給を消化するか」

 かちっとドライヤーのスイッチをオフにして圭助は言った。
 今日は水曜日だから今週中に、調べて会ってみるよ。東京駅に知り合いがいるんだ。
 と、圭助がそう言った時だった。
 さっきまで葵が手にしていた電話が再び鳴った。