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 その睦月を見た瞬間自分も刺されると思い逃げようとしたが、体が思うように動かず、デッキ出入口で立ち尽くしていた。
 しかしそこで妙な感じを小宮は覚えたという。
 睦月の足元はふらふらとおぼつかなく、視線がやたらと泳いでいたというのだ。
 小宮はそんな状況の中でなぜか、その睦月の心配をした。
 けれどそれもその時だけのこと。いま思えば二人も殺した後だったのだからあんな風になるのも無理はないと、そう思ったのだという。
 あの時のあの感じでは小宮自身のことは眼中になかったのではないか。そう思われる。

「それに加えて……」

 葵は浴衣の後ろ帯からさっき持って行った紙を取り出し、ペンでそのメモの部分をなぞりながら言った。

「睦月が逮捕された座席は、当初取っていた座席とは違っていた。そして……」

 葵は少しためらいがちにに口を濁し、はあっ。という大きなため息をつく。

「戸野部知也、矢崎雅臣殺害現場の洗面所からその逮捕された座席まで、睦月の指紋と掌紋が、2人の血で付いていたんだそうだ」

「八方塞がりだな。そうなると七澤くんが自分の席でずっと眠っていたというアリバイが完全になくなる」

 圭助はやはりファックス紙をくるくると丸め、自分の枕元にそれを置いて布団に潜り込んだ。
 心なしか、布団の中が冷たくて圭助は疲れを癒してくれるような気がした。

「……なぁ、なんでこの2人はこの新幹線に乗っていたんだ?」

 天井の木目の模様をぼうっと見つめながら圭助は葵の問いに頭を振る。

「推測するとすれば、また七澤くんから金を巻き上げようとしてたんじゃないのかな」

「なんでこの2人は睦月が京都に行くのを知っていたんだ」