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 クスクスと笑いながら言った薫は、葵の隣に腰を掛けて頬杖をつく。

「……誰に?」

「あっはは! やっぱり覚えてない。ふふっ」

「っお話し中失礼致しますわねっ! 社長ぉっ! ……お電話ですっ」

 があっ! という勢いで2人の目の前に現れた小枝子は、携帯を片手に葵の腕を引っ張ってロビーの隅へと連れ去る。
 葵は睦月の事かと思いさっと顔色を変えて小枝子から携帯を受け取った。

「はい、日下で……」

 ツー、ツー、ツー。
 急いで出た受話器の向こうからは不通音がただただ鳴っているだけだった。

「小枝子ちゃん、切れてる」

「当たり前ですよ。もとより掛かってきていないですから。 あ、でも姉さんから掛かってきたかも知れないですねぇ~」

 あぁ、はい。そういう事ですか。

 葵は小枝子がなにを言いたかったのかを察し、顔を赤くして右手で口元を覆った。

「仕事中ですよ、し・ご・と・中!」

「コンダクターさん! みんな揃いました」

 小枝子ちゃんのお小言が始まった。

 そう思った葵だったが、薫の横で明るく手を振ってそう言ったツアーメンバーのひとり、高坂理恵を見て胸をなでおろした。

「さあ、お仕事だ。梅原さん」

「あぁっ! ……逃げられた」