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 まだやや沈み加減の葵をなんとか元気づけようと、メンバーのひとりである柴崎麻衣子は話しをそらし、盛り上げようとする。
 睦月の事件は、少なからず薫から聞いていたらしかった。

「あ、ねぇあの木ってなんの木なのかな。あたし全然知らないんだぁ、そういうの。オンナの癖に」

「あれはソメイヨシノでしょ? 春ならきっと綺麗だよ~」

「あ、桜ね! ……そういえば、芳乃ちゃん元気? 薫」

 麻衣子はふっと思い出した様子で薫に聞いた。
 薫は一瞬瞳をすっと細くしたが、それを咳払いで消し、明るい顔で麻衣子に答えた。

「うん、今は短大出て働いてる」

「いま23歳? いーなぁ」

 理恵と麻衣子は2人して若い若いと呟き羨ましがる。

「ふふっ。そろそろ出ましょうよ。他もまだ廻るんだから」

「久世さん」

 葵は何を思ったのか不思議そうに薫へ問いかける。

「ほんとに、元気?」

「……なに言うのよ日下くん。元気よ? なんなら今度の休みにでも会ってみる?」

 葵は自分がなにを聞きたかったのか思い出せず、ひとまずここは会話を区切るしかなかった。

「いや、別にいいよ」

 

「510お願いします」

 ホテルに戻った葵はフロントでキーをもらい、部屋へ戻ろうとした。