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その日の夕方、葵は3日ぶりに感じる真新しくも懐かしい事務所の空気を吸った。
けれど落ち着いていられたのも束の間、すぐに部屋の中の空気は一変した。
「よう、お帰り」
事務所の中に居た葵、小枝子に圭助はドアを開けるなりそう言った。
「ああ、悪かったな。で、どうだった?」
「それがすごい収穫があったんだ」
圭助は早く伝えたくて背負っていたリュックから1枚の大きい紙を取り出し、テーブルに広げた。
「ほぉ~、誰ですかこの美形」
小枝子が感心しながら紙に描かれている1人の人物を圭助に聞く。
「戸辺たちと接触があった唯一の人物だ」
「っ居たのか!」
葵は驚きに目を馳せ、食い入るように圭助に聞く。
その驚きは歓喜へとすがたを変え、葵の中の不可能という事実を可能という真実へみるまにすり替えた。
「名前、年齢ともに不詳だけどね。クラブのママの話しだと戸野辺は彼を兄だと言っていたらしい。けれどママは顔はもちろん仕草なんかでそれは嘘だと思ったって」
「実際戸野辺にしろ結城にしろ兄弟なんて居ないらしいからな」
紙に描かれている人物を見ながら葵は圭助の言葉に付け足す。
「でも……この人物がどうして七澤くんを殺人者になんかしなきゃならなかったんですか?」
返事が両者からも返ってこない。どうやらそこが問題らしかった。
「そうなんだよな。合計2千万もの大金を使って、わざわざ遠回しに復讐する意図がわからない。憎いなら、睦月自身を殺せばいいのに……」