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「けどな。どうもはっきりしないのが、ほら、前にも言ったろう? 睦月が憎いなら睦月を殺せば良かったのに、なぜ戸野辺と結城の2人を殺して殺人犯にしたかったのか」
そう。うまくすれば終身刑はおろか、懲役も情状酌量でさほど長くはならない可能性もある。
「そしてなぜ上杉までも殺さなければいけなかったのか」
「それは多分口封じだろう。渋谷に聞いたんだ。女の力で戸野辺と結城の男2人を殺せるものかと。 あの惨状ではまず無理だろうと言っていた。 そして何より戸辺たち殺害時刻には俺と小枝子ちゃんが彼女と居たからね」
とても良い香りがふっと漂よわせたコーヒーの登場に、ありがとう。と葵は小枝子に礼を言う。
「きっと上杉が2人を殺害したんだ。 そして、大方仲間割れか何かで決別しそうになったんだろう」
「自首してやるとでも、言ったかな。嘘だったにしてもね」
それを恐れた薫は心臓麻痺に見せかけて上杉を殺害した。
葵、圭助両者の結論はそういう事になった。が、小枝子は2人が触れなかった疑問について聞く。
「上杉って人が殺された時間、葵さん一緒に居たんでしょう?」
うわっちっ。と、圭助の声。
「……小枝子さん、今度淹れてくれる時はもうちょっと温めがいいな」
「でしたらご自分でどうぞ」
「なにか、あるはずだ。なにか……」
うわっ、きっつぅ~。
べっと舌を出して小枝子に言った圭助は背伸びをして頭の上で手を組んだ。
芳乃の遺書はない。
獄中の田川が言うには戸野辺が出所するのを目前にしてあの男、上杉が戸辺に面会に来ていたという。