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 青年がこの村へと帰ってきたのは、あの日以来1年振りの事でした。
 私はまた満開に……まるでその青年を迎え入れる祝いの様に、咲き誇っておりました。
 早く、早く青年に想い出してほしかったのです。消え去る事のない、真実を……。

 いつかのあの村へ、帰ってきた。
 変わらぬ風景、変わらぬ人々、変わらぬ……。

(別に、あいつへ会いに帰って来た訳ではない)

 瞼の裏では、約束の日が……今も染み付いて離れない。

(サヤが……微笑っている)

 白いリボン。紺の袴。うす紅色の……唇。
 瞳を白昼にさらしても、刹那サヤは消えなかった。

「サ……っ」

 手を差しのべると同時にサヤは消えた。
 それは、桜がみせた幻だったのかもしれない。
 伸ばした手の先には、桜の花弁……。緩やかに舞い降りる、桜の花弁……。

(桜……?)

 俺は脚を止めて、右手の平で額を覆う。 ずくずくと呼び起こされる記憶。

(そういえば、あれからもう1年)

『あたし、見合いすることになったの』

 残酷なまでに綺麗な微笑。

『だからね、もう』

(あの場所は……どこだった?)

 どくどくと心臓が血流を速くする。
 石段。桜……。そして古びた……。

『あなたとは会わない』