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あんまりに私が目を大きくしていたのか、高村くんは、クスッ。と笑って、私を見た。
「食べる?」
今までかじっていたそのオレンジを私にさし出して高村くんは聞いた。 けれど私は顔を真っ赤にして首を思いきり横にふった。
そんなこと、できるわけない!
私の反応がおもしろかったのか、それとも特に意味はなかったのか。高村くんはまたクスッ。と笑って、そのオレンジを机に置いた。
「前より、おもしろい形になっただろ?」
高村純一という人は本当に変わり者で……。 映画研究会に入っている彼は(といっても部員は彼ひとり)。山が撮りたいといきなり十日間も学校を休んだり、ハチの巣を教室に持ち込んで大騒ぎになったとか……。(どうやって持ってきたのだろう)。 突飛な行動に誰もついていけず、男子の間でも浮いているみたいだった。
浮いているのは、私も同じだけど……。
そういえば中三になる少し前に、高村くんの両親は、事故で他界したと、聞いたっけ。
そういう話を聞くと、高村くんもいろいろあるのかなぁ、なんて思えてしまう。
でも夏休みに一人理科室かりきって映写機まわしてるってのも……。
「やっぱヘン。 暗幕までかけちゃって……。暑くないのかしら」
と、ひとりボソッと言った時にガラッ。と、美術室のドアが引かれて、最近見慣れた高村くんの笑顔がそこにあった。
「ごめん、ちょっと遅れたな。 肝心なこれがなくちゃ描けないのにな」
はい。 と、手渡されたオレンジ。
いつのまにかお昼の十二時になると、高村くんがオレンジを届けてくれることになっていた。
冷蔵庫は理科室にあって、昼になると高村くんがとりだしてきてくれて、帰りに私がそれを置きに行くというのが日課になっていた。