p29

 一度行った時の思い出だろうか、凌は懐かしそうに目を細めて話した。

「……連れてってよ。凌の行くトコ、行ったトコ……。みーんな」

 柊は凌の腕を両手で絡めとめ、凌の顔を覗くようにして言った。
 その顔を見た凌は子どもの様に幼く笑い、柊と繋がっている手を勢い良く引っ張り、駆け出した。

「オッケー! じゃあやっぱはじめは金閣寺ッ!」

「い゛!? ちょっ……待ってよっ凌ッッ!! 」

 凌……。アンタに逢わなきゃ、あたし一生こんな風に笑わなかった。
 一生ひとを……愛することなんてなかったよ。凌……。