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『鋭利な刃物で心臓を一突き……』 姉貴と、同じ……。
「バッカねぇ陽司。 “龍神”の肩を持ったら殺されるってわかってるのに」
アパートの向かいの家の屋根の上に、長い月明かりに透けた茶色い髪をなびかせたまま立っている女が、鼻で笑って言った。
誰……? あの人が、殺したの? 姉貴も、陽司君まで——!!
影良は倒れた陽司から出ている血をじっと見つめる。 が、しかし、涙は……出てはこなかった。
「クスッ。 私は明日未来ってゆーの。 九十九一族の分家筋、遠い親戚ってトコかしら? でも、貴女にこんな風に自己紹介しても無駄ね……。 だって、もうすぐその日本刀で殺されちゃうんですもの、わたしに……。クスクス」
未来はコツッ。 と屋根の上で歩みを一歩進め、ひらりとアパートの廊下に跳んだ。
殺される……。 姉貴みたいに、この、洋司君のように殺される——!!
そう思った瞬間、影良は玄関から全速力でアパートの廊下を未来の居ないほうへと走った。
「待ちなさい龍神!!」
陽司の背中に突き刺さっていた刀を引き抜いて、逃げた影良に照準を合わせようとした、その時だった。
「やめろ————!!」
1人の男が同じく向かいの屋根からアパートに跳び移り、未来の持っていた日本刀をバシン! と、叩き落として影良の走った後を追いかけた。
「っ痛ぅ——! 誰?!」
未来は叩かれた右手首をかばって、背中しか見えない相手に叫んだ。
その男はあっという間に影良に追いつき、影良の手を取って一目散にその場を後にした。
