小説一覧カテゴリー: TIMEシリーズ

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p10

 ……俺、このままトンズラしよっかな。  葵はそんな事をかなり本気で考えつつ、ポケットに手を突っ込んで3階の窓から見える商店街を呆然と見下ろしてみたりしていた。  そんなことをしている間に清掃業者が来て、家財、事務用品一・・・

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p9

「相っ変わらず、いい環境でお仕事しているのねぇ」  日下旅行代理店事務所のドアを開くなり言った小枝子は、眉間に皺を寄せて部屋を見渡す。 「不精者なんだよ。悪いね」  手に取るような分かるやすさのイヤミに片眉だけを下げて葵・・・

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p8

「え、あ、葵さん?」  小枝子はだるそうに立ち上がって押し入れの襖を引いた葵に何をするかと聞いた。 「あ、小枝子ちゃん出てて。俺今から着替えるから」 「~~~っあー! はいはい。そーですねっ」  顔を少し紅に染め、小枝子・・・

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p7

  「っな……!?」  女は部屋の中の状況を一目見て絶句してしまった。  カーテンの隙間から埃を浮き立たせて差し込む朝日の光を一面に浴びているにも関わらず熟睡するこの部屋の主、日下 葵。そして、その脇には見慣れ・・・

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p6

 午前6時半を少し回った頃、街は徐々に目を覚まし始めた。  昨日の蒸し暑さが今朝になってぐっと冷え込んだせいで、コンクリートの熱が蒸発し、朝露となってこの街を乳白色へと染めていた。  カツン。と、この時間にはそぐわない音・・・

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p5

 こいつ、性格変わってない。  そう思った葵だったが、その想いの中に嫌な感情は入ってはいなかった。  そして葵は数ヶ月振りに笑顔というものを見せて、睦月に躊躇いがちに言った。 「じゃあ、頼むよ」  その言葉は、ふたりの空・・・

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p4

「いやぁ、センパイが会社持ったって聞いたんで、雇ってもらおうと思って来たんです。 で、その会社ってどこですか?」  嬉々として言った睦月に、葵は再度肩を落とし、溜め息と同時に今しがた自分が出てきたおんぼろビルを、気力無く・・・

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p3

 とても懐かしそうに七澤睦月は話した。  話をされた葵といえば、難しそうに顔をしかめ、頭の中で必死に過去の記憶をたぐり寄せている最中だったりする。  生温い風はどこからともなく吹いてきて、葵の髪をさらりと撫でて、そしてま・・・

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p2

 そしてその透けた髪をかしかしっとかいて、ブラインドから眺めていた景色を後にし、葵は暗い部屋の中へと視線を戻す。  汚い……。  葵はさっきとは別の諦め気分の溜め息をつくことになる。  この事務所、電気はもちろんのことガ・・・

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