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「己を……卑下してはいけないな」

 ふっと視線を泳がせた梅原さんはその目を俺に向け、子供を叱るように言った。

「君がそう思ってやらなければ、あの娘は浮かばれないよ」

 どくん……。
 血流が速まり、頭の中が真っ白になった。

「出逢いを悔やむことは、ない」

「悔やんでなんて……いませんよ。 彼女に逢って、俺は変われたのですから」

 そう、救われるように……変われた。
 人を愛することなんかないと、思っていた。
 死ぬまで人を愛することなんかないと……。

 
 

 2年前 ――――
 この日、大学の構内の中はやたら人が多かった。
 真夏日で、外気温は軽く35℃を越えていたため、クーラーの効いている構内に皆がこぞって集まったのだ。

「アッツぅーい! 本当にここエアコン入ってるのぉ!?」

 友人の藤崎 圭助と共に食堂に入って昼食をまかない婦さんに頼もうとした、その時、だった。
 後方のテーブルからびっくりするような声が聴こえてきたのは……。

「……っひゃぁ~。でっかい声だな、葵」