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「葵っ! 夕飯食べてさ、ドライブ行こう」

 流し台にぱたぱたと行き、シチューをスープ皿によそってそう言った。
 こんな瞬間に、貴女が大人の女性ひとだと俺は思っていたんだ。

 いつまでも、こんな時間が……こんなやわらかい空間が続く気が、していた。

 

 

 お台場の有名なデートスポット。夜ということもあって、周りはカップルばかりだった。

「~~~俺ヤだぞ」

「なんでぇ? だって周り見てよッ、みんなしてんじゃん。今更テレることないでしょ」

 彼女はぐっと俺の腕を引っ張って言う。
 周りが“なにをしている”……のか、あえて言わない。

「あーおーいーっ。 ……いいよ、他のイイ男つかまえてしつもら」

「そういうこと言うなよ」

 ぐっと彼女の腕を引き戻して、落ち着いた声でそうつぶやく。
 けれど落ち着いて言ったにも関わらず、体そのものが心臓になったみたいにドキドキと脈拍を上げていった。

「……じゃあ、してくれる?」

 にっこりとその天使、いや小悪魔は笑って俺にそう言った。
 普通に流されて“する”のと、「していい?」「いいよ」。 っていうヤリトリの後に“する”のとでは、何がどう違うのかって、これほど恥ずかしさが違う時はない。

「ん……」

 ふっと目を閉じた貴女に、俺はどくんと動揺してしまう。そしてそれと同時に、微薬のような目まいが全身を包んだ。
 こういう状況下で、男が甘くなるのは仕方がない。
 俺は、そう思った。

「――……ちょっと。あたしバカみたいじゃない」