p3
「母上! ってる……、笑ってるわ!!」
風の中心となっているのは、今しがた目を覚ましたばかりの少女であった。
カプセルの前で小刻みに震えて、飛ばされない様に必死でメインコンピュータにしがみついているナキとは違い、切れ長の眼をうっすら細めて静かに微笑んでいる。
「メシア様、ナキ様とご一緒に神殿へ非難してください! さぁ、早く!」
ドウン!
ラボの床にヒューマニックウォータが流れ出す。 カプセルが、内の水圧に耐えきれずに破損したのだ。
そしてそれと同時に、まだ10代後半だろう少年がその親子に階上へ行くように指示し、2人の背中を完全に見送るまで自分はカプセルから離れなかった。
「……冬姫、俺だよ。覚えているだろう? 毎日同調した甲斐があったね……。もういいよ、鎮まりな」
少女、トキはまったく相反する肩まである白銀髪をさっと手でかき上げ、少年はまだこの世に“生”を受けて間もない彼女に言った。
「……もういい? PSYつかわなくなったら、みんな、もどってくる」
真紅の瞳が色を和らげ、宙に弧を描いていた金髪がさらりと裸体にしなだれ落ち、嵐は、嘘のようにその場から消えた。
少年はトキに自分のマントを羽織らせて、視線が合うように腰をかがめる。
「くすくす。大丈夫、戻ってこないよ。いい子だ。 じゃあ、次は何をするか……覚えているね」
「トキ、とぶ……。おひさまのした、いく」
たどたどしい言葉でトキは少年の首に腕をまわし、かあっと再び瞳を真紅に染め、少年と少女は空気の中へと溶けていった。