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 別に、なんとも思わない。今朝みたいなことはむしろ日常茶飯事で、コウにとってはまたか。ぐらいにしか思うことはなかった。
 しかし、その日だけは別だった。
 辺りの空気が……ここ一帯の気がなにかおかしい。

「シュカ、なんか……おれ、シンゾーどきどきいってる。なんか、変じゃ……ない?」

 ゾワっとした体を自分自身の腕で抱いて、コウは不安げにシュカの方に歩み寄った。

「————っ?! ここで時空移転ディメンショナル・チェンジしたらアウトだっ。 コウ!  走るぞ!!」

「っう、え?!」

 半ば強引に腕を引っ張られ、コウはシュカに連行されるかたちになる。
 まだ陽も昇りきらないダイバは、ほぼ無人となっていた。 通勤ラッシュの時間にもまだ早く、どこか別次元にでも跳んでしまった気になる。 しかし今のシュカにはそんな事に気を止めている余裕は無い。

「コウ、走りながら話すけど聞いて。 ……誰のために生きるんじゃない。自分のためだけに生きていって。自分コウっていう唯一のために生きろ!  ————っ死んだら何も変わらない、君が生きて変わるものもあるんだっ」

「……シュ、シュカ?  泣きたい……のか? ねぇ、どうしたんだよシュ……っ」

 重く鉛のついたような脚をゆっくりと止めた幼い青年は、こみ上げてきた涙をぐっと瞼でせき止めてコウを腕の中に引っ張った。
 超高層ビル群の谷間。
 “感情”というモノにひどく敏感なPSYサイは、互いに互いの心を寄せてアスファルトに長いシルエットを映す。

「う……んくぅ……!」

 情熱的に貪られる唇と舌に、コウは驚きを隠せなかった。